朝倉令子税理士事務所
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税金コラム
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【平成17年7月22日「退職金をもらっても確定申告をしたほうが有利な場合がある」】
■退職金をもらっても確定申告をしたほうが有利な場合がある
 先週、退職金に対する税金は、天引きされるので、確定申告は必要ありません、とお話しましたが、場合によっては、確定申告をしたほうが有利な場合があります。いったいどんなケースなのでしょうか。
(1)他の所得が赤字の場合には、その赤字と退職所得を通算できる
 たとえば、給与所得が100万円で、不動産所得が200万円の赤字だとしましょう。この場合、給与所得と不動産所得を通算してもまだ残る100万円の赤字は退職所得から差し引くことができます。先週の勤続年数25年、退職金2,000万円のケースでは、100万円の赤字を確定申告によって通算することにより、所得税が325,000になりますから、195,000円安くなります。

(2)退職所得以外の所得から引ききれない所得控除額を退職所得から差し引く
 たとえば、年の初めに退職して、退職した年の給与所得が非常に少なく、基礎控除や扶養控除、配偶者控除などの所得控除が給与所得から引ききれない場合があります。このような場合には、確定申告によって、その引ききれなかった所得控除を退職所得から差し引くことによって退職所得から天引きされた税金の還付が受けられます。
 たとえば、給与所得が100万円、所得控除額の合計が200万円の場合には、給与所得から引ききれなかった所得控除額100万円は、確定申告によって退職所得から差し引くことができます。

(3)退職所得以外の所得に対する所得税より住宅ローン控除の方が多い場合
 たとえば、給与所得に対する所得税が8万円で、住宅ローン控除が15万円の場合、年末調整では、住宅ローン控除は8万円を超える部分(7万円)については、控除する所得税がありませんから、切り捨てられています。このような場合には、退職所得から天引きされた所得税があれば、確定申告によって、切り捨てられた住宅ローン控除額7万円が還付されます。退職所得に対する所得税が15万円だとすれば、そっくり7万円が戻ってくるわけです。

(4)「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合
 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、20%の所得税を天引きされている場合には、確定申告によって、その退職所得に対する正しい税額を計算しなおす必要があります。正しい税額を計算しなおした結果、20%の天引きされた税額のほうが多ければ、還付されますし、少なければ納めることになります。

 いずれの場合にも、注意しなければならないのは、退職所得から天引きされた所得税があるかどうかを確認することです。天引きされた所得税がないのに、税金が還付されるはずがありませんよね。退職所得の源泉徴収票を見て天引きされていることを確認してから、税務署に申告に行ってください。
 それから、住民税については、上記の還付の請求は認められません。給与所得などに対する住民税は、翌年度に課税されるため、その年の所得に対する住民税は翌年の6月から納付が始まりますが、退職所得に対する住民税の課税は、給与所得などと違って、もらった年に課税されます。そのため、特別徴収(退職所得からの天引き)によって退職所得に対する課税を完結させることとしています。そのかわり、退職所得に対する住民税を計算する際には、10%の控除が認められています。つまり、天引きされる段階で、通常計算される税額から10%を差し引いているわけです。

(5)定率減税を使い切っていない場合
 平成17年分の所得税は20%、平成18年分の所得税は10%の定率減税があります。この定率減税は、平成17年分は25万円、平成18年分は12万5千円が限度となりますが、給与所得等、退職所得以外の所得で定率減税の限度額までを使い切っていない場合には、退職所得について確定申告をすることにより還付を受けられます。なぜなら、退職所得に対する所得税を計算する場合には、定率減税を考慮しないところで源泉徴収を行っているからです。
 たとえば、平成17年の所得が給与所得と退職所得しかない場合で、給与所得に対する税額が10万円、定率減税が2万円の場合には、退職所得に対する源泉徴収税額がある限り、定率減税の残りの22万円(25万円―2万円)について、源泉徴収された金額の範囲内で、確定申告により還付を受けることができます。
   
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